スマホなどの端末とネットワーク環境があれば、どこでもゲームを遊べるクラウドゲーミング。近年対応タイトルも充実し、ますます便利になってきています。しかし外出先でプレイするとなると通信量が気になる方もいるのではないでしょうか。そこで今回は実際にXbox Cloud Gamingでどのくらいの通信量が発生しているのか確認してみました。またプレイする環境やゲームタイトルによって違いがあるのかも調べましたので、興味のある方は参考にしていただければと思います。
- 映像に動きの多いゲームは通信量も多い
- プレイする端末によってストリーミング解像度が変わる
- ストリーミング品質はストリーム統計を表示させて確認できる
検証方法
使用した端末
今回の検証ではスマホのほか、タブレットやノートPCを使用してのテストも実施しました。それぞれの端末の仕様は下記の通りです。またスマホに関してはWiFiだけでなくモバイル通信を用いた検証も実施しました。
スマホ | タブレット | ノートPC | |
メーカー | Motorola | Xiaomi | Lenovo |
商品名 | moto g32 | Redmi Pad SE 8.7 | IdeaPad Pro 5 gen 9 |
ディスプレイ解像度 | 2400×1080 | 1340×800 | 2880×1800 |
チップ/CPU | Snapdragon 680 4G | Helio G85 | Ryzen 7 8845HS |
メモリ | 4GB | 4GB | 16GB |
モバイル回線 | 日本通信SIM | ― | ― |
通信量の測定方法
AndroidやWindowsでは各アプリが使用した通信量を確認することができます。そこでブラウザアプリが使用した通信量をプレイの前後で記録し、その差分からゲーム中に使用した通信量を算出しました。そのようにして求めた通信量をプレイ時間で割った値を平均通信量[Mbps]と定義し今回の比較に用います。なおプレイ時間は1回の測定で少なくとも30分以上とるようにしました。
平均通信量 = (プレイ後の通信量 – プレイ前の通信量)/プレイ時間

検証結果
映像に動きの多いゲームは通信量も多い

まずプレイするゲームによって通信量にどの様な差があるのかを検証しました。検証に用いたタイトルは下記の5タイトルです。なおプレイ環境はスマホでWiFi回線を使用しています。
- Forza Horizon 5
- メタファー:リファンタジオ
- Final Fantasy III ピクセルリマスター
- Vampire Survivors
- PowerWash Simulator




結果を以下のグラフに示します。平均通信量が5Mbps程度のタイトルが多いなか『Final Fantasy III』はやや小さな、『Vampire Survivors』はやや大きな数値となりました。これは映像の動きの多さによる影響と考えられます。『Final Fantasy III』は簡素なグラフィックで書き換えが少ないためデータ量が少なくなったと思われます。一方の『Vampire Survivors』も簡素なグラフィックではありますが、中盤から終盤になると敵の量が膨大になり画面がかなりゴチャゴチャするのでデータ量が多くなったのだと思われます。

ストリーム統計で確認してみる
Xbox Cloud Gamingではストリーミングの解像度やフレームレート、ビットレートなどの数値をストリーム統計として画面上に表示させることができます。ストリーム統計の表示方法は、ガイドメニューから設定を開き「ストリーミング」のカテゴリを選択します。すると「ストリーム統計オーバーレイ」の項目がありますのでこれをONにします。これにより画面上部に解像度やフレームレート等が表示されるようになります。

ストリーム統計で確認すると、今回使用したスマホでは1280×720の解像度でストリーミングされていることが分かりました。スマホのディスプレイ解像度はフルHD以上なので意外な結果でした。また本検証で求めた平均通信量とストリーム統計のビットレートが同じくらいの数値になっていたので、妥当な値だと考えられます。

なお『Vampire Survivors』のプレイ中にストリーム統計のビットレートを確認すると、最初は5Mbps程度だったのが中盤になると10Mbpsを越えていました。やはり画面がゴチャつくに従って通信量が多くなっているようです。ちなみに終盤になるとゲーム自体のフレームレートが低下したせいか、ビットレートは10Mbps以下に低下しました。

端末によってストリーミング解像度は変わる
次に『PowerWash Simulator』を様々な端末でプレイし通信量を調査した結果を下のグラフに示します。スマホのモバイル回線では遅延やフレームレートの低下が激しく、快適にプレイできる状況ではありませんでした。一方WiFi環境でも各端末で通信量に大きな差が生じており、この差の原因としてストリーミング解像度の違いが考えられます。

ストリーム統計で各端末でのストリーミング解像度を確認した結果を以下の表に示します。スマホは1280×720でしたが、タブレットとノートPCは1920×1080になっていました。タブレットのディスプレイ解像度はスマホより小さいのに、より高解像度でストリーミングされていたのは意外でした。
端末 | ディスプレイ解像度 | ストリーミング解像度 |
スマホ | 2400×1080 | 1280×720 |
タブレット | 1340×800 | 1920×1080 |
ノートPC | 2880×1800 | 1920×1080 |
1920×1080の画素数は1280×720の2.25倍です。スマホでの平均通信量5.43[Mbps]を2.25倍すると約12.2[Mbps]となり、タブレットとノートPCでの平均通信量に近い値になるので、やはり解像度の違いが通信量の差として表れているようです。
ストリーミング解像度は通信速度で決まる?
スマホはフルHD以上のディスプレイ解像度を持っているにも関わらず1280×720でストリーミングされていました。その原因として通信速度によってストリーミング解像度が切り替えられている可能性があると考えました。そこでそれぞれの端末の通信速度をUSENスピードテストで測定しました。得られたダウンロード速度を以下のグラフに示します。それぞれ3回ずつ測定しています。

モバイル回線は格安SIMを使用しているということもあり断トツで遅いのは当然の結果ですが、同じWiFiを使用しても各端末で通信速度に差がありました。これは各端末の処理性能やアンテナの性能が起因していると考えられます。スマホはタブレットやノートPCの半分程度の速度しか出ていないためストリーミング解像度が下がってしまったのかもしれません。
3回測定の平均値
Download [Mbps] | Upload [Mbps] | Ping [ms] | Jitter [ms] | |
スマホ(Mobile) | 9.6 | 8.3 | 45.7 | 77.0 |
スマホ(WiFi) | 115.5 | 154.8 | 13.0 | 16.3 |
タブレット(WiFi) | 229.5 | 262.1 | 14.5 | 1.2 |
ノートPC(WiFi) | 262.8 | 229.7 | 14.0 | 2.27 |
1時間で何GB?
プレイする環境やタイトルによって通信量が変わることが分かりました。では結局1時間プレイすると何GBのデータ通信量になるのか見てみましょう。そのために平均通信量[Mbps]で1時間通信し続けた場合の総通信量[GB/h]を考えます。総通信量は以下の式で求められます。
総通信量[GB/h]=平均通信量[Mbps]×3600[sec/h]÷8[bit/Byte]÷1024
解像度が1280×720と1920×1080の場合の目安を以下の表に示します。やはり1時間もプレイすると数GB程度の通信量になるので、従量課金の回線で日常的にプレイするのは少し抵抗がありそうです。ただ実際には回線速度の影響でストリーミング品質が低下し通信量も少なくなる可能性があるので、ストリーム統計でビットレートを確認して頂くのが確実だと思います。
解像度 | 平均通信量 (ビットレート) | 1時間あたりの 総通信量 |
1280×720 | 約5.5Mbps | 約2.4GB |
1920×1080 | 約12.5Mbps | 約5.5GB |
まとめ
ゲームのグラフィクによって通信量が変わるというのは予想していましたが、『Vampire Survivors』でこれほど多くの通信が発生するというのは驚きました。また端末や通信環境によっても通信量が変わってくるので、気になる方は実際にストリーム統計で解像度やビットレートなどを一度確認して頂くと良いのかなと思います。
現状、公式の機能ではユーザーがストリーミング解像度などの品質を指定することができませんが、今後こういった機能を正式に搭載してくれればなぁと思います。というのもクラウドゲーミングをプレイする状況やゲームタイトルによって何を重視するのかが変わってくるからです。自宅のPCでコマンド式RPGをプレイしているときと、外出中にスマホでアクションゲームをプレイしているときでは求めるパフォーマンスが違うはずです。
今はまだXbox Cloud Gamingもベータ版ということなので、正式版になった暁には更なるサービス向上に期待したいですね。
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